Hummming

フンフンフン

「世の中にはいろんな人がいるからね」

そういえば先日、初めて顔を合わせた人と飲みに行った。
口が悪くて文句ばかり言う人だった。
外見やキャラクターにはそのほうが合っているし、
東北出身の人によくある(と何かで聞いたことがある)、
ぶっきらぼうなだけで根は優しい人なのだろうなあ、とは思ったけれど
(そしてそれは言動の節々にも見られたのでたぶん間違っていないのだけれど)
聞いているうちに関係ない私まで気が滅入ってきてしまうので
途中からそれを冗談にして流すことにした。


文句、グチ、ぼやき、罵倒。
そういった類のものは大抵笑いのネタになる。
小さな頃から父の膝の上で「笑点」やら「花王名人劇場」やら
演芸番組を見て育ったことですっかりお笑い好きになり、
挙句の果てに自分まで(アマチュアながら)舞台に立つに至った私には
つたないながらもその考えやノウハウが身に染みついている。
そんなふうに教育してくれた父母には、大変感謝している。
(勿論、父母にはそんなつもりは毛頭なかったと思うのだけれど)


「ずいぶん合理的に考えるなあ」
その人は共感・賛同を得られなかったことが不服だったのか、
それとも面白おかしく解釈しようとする私に感心してくれたのか、
そんなことを言った。
楽しいほうに考えることは合理的に考えることとは違う。
合理的だと言われてうれしかったことはない。
というか、合理的って何だ。
面白い、と笑って忘れるんじゃだめなのか。
残念ながらこの人とは考え方が違うなあ、と思った。


考え方が違うのは悪いことじゃない。
たぶん、考え方が違う人とこそ、ピースがぴたっとはまって
面白い化学変化が起きたり、愛し合ったりできるのだと思う。
でもその場に関して言えば、考え方が違うだけでなく、
お互いのピースがはまる予感が一切なかった。


ありがたいことに、私は人との出会いにとても恵まれてきたので
こんなすっきりしない気分になるなんてちょっと久々のことだった。
そんなこともあるのだなあ、と少しびっくりしてしまった。
でも、「世の中にはいろんな考え方をもつ人がいる」ということ、
「必ずしも自分と波長が合う人ばかりではない」ということ、
うっかり忘れてしまうと非常に危険な2つのことを思い出せたという意味では、
まあ、出会うことができて良かったのかもしれない。


改めて、私に出会ってくれた皆々様に、感謝の気持ち。
ありがとう。