Hummming

フンフンフン

六十の本卦がえり

髪を切ってもらって気分よく黄色い電車に乗っていたら
向かいに座っていた中年男が「やんのかよおい!」と
声を荒げて立ち上がり、連れ(やはり中年男)の胸倉を掴んだ。
隣に座っていた人が呆れ気味になだめて事無きを得たけれど
一部始終を見ていた私は何だか無性に腹が立ってきて
皆が目を逸らす中、奴らが気付くまでじっと睨み続けてやった。
そりゃあもう、親の仇とでも言わんばかりに。
程なく視線に気付いたらしく、中年男は睨み返してきたけれど
私が一向に引かないから根負けしたのか、目を逸らした。
目を逸らされても、私は奴らが降りるまで睨み続けた。


いや、意味なんてないっす。
あまりにもばかみたいだったから。
だって言葉の勢いで「バカ」って言われてキレてんだよ?


船橋で奴らは降りるや否や取っ組み合いのケンカを始めた。
二人して階段転がり落ちればいいのに、なんて
私はちょっと悪魔なことを考えながら奴らを見送った。