Hummming

フンフンフン

3月11日のこと、その1

地震について書いてなかったな。書きます。
これを読んだらいやなこと思い出してしまう人もいるかな。
それでもこれ忘れたらだめだよな。書きます。覚え書き程度に。


渋谷の会社、ビルの9Fで地震に遭った。普通の週末で、普通の午後だった。
いつも小さな地震が来るだけでも、9Fなのですごく揺れる。
最初は「またかー」なんて暢気に構えていたけれど、
揺れがだんだん凶暴性を見せてきた。容赦なく揺れる。


私は、かくれんぼと防災訓練以外で初めて、机の下に潜った。
机の下に潜って、声も出せないまま、机の脚を必死で掴み続けた。


机の上からいろんな物が落ちてきた。
ボトルガム。タンブラー。コードレス電話。PCのディスプレイ。ノートPC。
観葉植物も倒れたし、蛍光灯のライトレールっていうの?あれも落ちた。


うちはWeb屋だからすぐに誰かが検索する。今のは震度5。震源地は宮城県沖。
どういうことだ。宮城県沖が震源地で、東京が震度5っていうのは。
外に出ようということになって、訳も分からないまま階段で下へ降りた。
壁にはひびが入っていて、ペンキがパラパラと剥がれ落ちていた。


外に出てもたびたび余震が起きた。
近隣のビルがしなっているのがよく分かった。
電話しても繋がらないし、メールを送っても返ってこない。
手元にあるiPhoneから、Twitterで今の状況を探るばかりだった。


社長は「こんなの大したことないよ、復旧しましょう」って言ったけど
大したことないはずがないし、ただ呆然としてしまったので、そのまま帰った。


昭和女子大が最寄りの避難場所だったはずだ、一度帰宅して行こう、
そう思ったんだけど、家に着いてテレビを点けて、惨状を目の当たりにして
親と連絡がつかないのがどうにもこうにも怖くなって涙が出てきた。
とにかく公衆電話から連絡しよう。荷物を背負って家を出た。


国道沿いの歩道は人の波ですっかり溢れかえっていたし、
最寄りの公衆電話は3、4ばかり並んでいた。
順番を待って実家の番号をプッシュすると、すぐに母セイ子の声が聞こえた。
「電気ポットが壁に当たって壁のほう壊しちゃったのよアハハハハ」
元気そうだった。安心して泣きそうだったけど、笑われるからがまんした。
テレホンカードを入れたけれど、度数は減らなかった。ありがとうNTT。


そうこうしながらもTwitterを追い続ける。
会社に残っている先輩から「困ったらこっちへおいで」というツイート。
近所に住む先輩から「避難所行くんだったらうちでもいいよ」というツイート。
一つ一つやり取りを続けながら、友達と下北沢で合流することになった。
まずはSHELTERを目指して、その後はお腹も空いたのでBUG HOUSEへ。
BUG HOUSEはいつもどおりだった。
いつもどおり、人が集まって、いつもどおり、わいわい飲んでいた。
なので私もいつもどおり、石焼ビビンバと蜂蜜ハイボールを頼んだ。


つづく。

3月11日のこと、その2

つづきね。もうこれ自己満足だけど。日記なんて自己満足か。


並行して、私にはやらなければならないことがある。
明日はイベントじゃないか。どうするんだこれ。
既に今日行くはずだったライブは中止が決定していた。


オープニングアクトのハタさんは群馬在住なのでキャンセルになるとしても
メインアクトのトキオさんも無頼庵も駆けつけると言ってくれている。
会場となる風知空知も「おちけんちゃんの判断に任せる」と。


でも、当初思っていた以上に被害は大きく、家族や友人に
必死に連絡をとっている人の姿が多数見受けられた。
TVでは大津波警報が発令され、日本地図が真っ赤なラインで囲まれていた。
電車が動いたとしても、余震も続いているし、お客さんは来ないだろう。
現実的にも、フライヤー等々、明日の準備なんてほとんどできちゃいない。
何より、とてもこんな中ライブイベントなんてできる気分じゃなかった。


出演者、会場に連絡を入れた。

明日の件、このまま何事もなければ交通網は心配ないかと思いますが、お客さんも我々も安心して楽しめる場にするのは難しいと感じています。明日のライブは中止とし、日程も含め再度相談させていただけませんか?申し訳ありません。。出演者各位から回答を頂き次第、最終決定をアナウンス予定です。

Twitterで連絡を送りながら、中止の準備をする。
ブログ、告知のツイート、予約者への案内文。全部テキストを作っておく。
BUG HOUSEでそれらを作っている間も、緊急地震警報のサイレンが鳴り続ける。


少しずつ返信が返ってくる。みんな無事で、みんな了承してくれた。
返信の1通1通を開封して、目を通すたびに涙がこぼれた。
延期の悔しさ以上に、励ましの言葉や「またやろう」という声が温かくて。
BUG HOUSEが暗くてよかった。友達が寝ててよかった。それぐらい泣いた。
ここに載せようかと思ったけれど、DMなのでやめとく。私だけの宝物にする。


朝になって、最後の返信が届いたので、会場である風知空知に連絡。
出演者に連絡し、Twitterへ告知を出し、ブログを公開し、メールを出した。
いつもとかわらないまぶしくて静かな朝に、イベントの取りやめが決まった。
そこで初めて、何とも表現しがたいやりきれなさを感じた。